マンモグラフィーでは、「乳腺」も「凝り」も同じように白く写ります。
閉経前の女性は乳腺密度が濃く、凝りが判別し難い為、40代女性にとって最適な検診のあり方を探る為の臨床試験が進んでいます。
東北大学大学院腫瘍外科の大内憲明教授等は、平成19年度から、厚生労働省の第3次対がん総合戦略研究事業として、40代女性へのエコー検診の有効性を調べています。
乳癌になった事が無い40代女性を、マンモグラフィーとエコーの併用検診を受ける人と、マンモグラフィーだけの人に無作為に分け、エコー検診の正確度や、死亡率が低下するかなど、有効性を検証中です。5年間で10万人分のデータが必要で、全国23都道府県で試験への協力を呼び掛けています。
大内教授は、「勧告をきっかけに、国は更に科学的根拠を積み上げ、検診のあり方を考える必要があるだろう」と指摘します。
厚生労働省は2月下旬、専門家と共に米国政府作業部会の担当者や癌協会の幹部等を訪問し、今回の勧告の狙いや現状を聞きました。がん対策推進室の高岡志帆室長補佐は、「現時点で、日本の検診体制を変える必要はないと判断しているが、何故不利益が焦点となったのか。今後のあり方を考える上で、意見交換したい」と話しました。
乳癌は早期発見・早期治療に繋がれば、9割以上が助かるとされます。しかし、検診受診率が7割を超える欧米では、約20年前から乳癌による死亡率は下がっているのに対して、日本の死亡率は上がる一方です。
日本では平成16年度から、マンモグラフィー検診の対象年齢が、50代以上から40代以上になりました。
しかし、乳癌の検診受診率は20%前後で、国は平成23年度までに、50%以上に引き上げる事を目指しています。今年度は、40~60歳を対象に、5歳刻みで検診無料クーポン券を配布。新年度も引き続き配る方針です。
乳癌検診受診率の向上に向け、活動しているNPO法人「J・POSH」の松田寿美子事務局長は、「日本の現在の受診率では、検診の利益、不利益を論じる土台にも乗っていない。"砂粒"のような癌を見つけるのにマンモグラフィーが最適なのは間違いなく、データを積み重ねる意味でも、一人でも多くの人に検診を受けて欲しい」と話します。