2009年12月アーカイブ

癌細胞とは?

○癌細胞の特徴

 ・コントロールを失い、増え続ける
 ・増えて塊が大きくなり、様々な臓器に侵入、転移する
 ・一部に増殖能力が高い、癌幹細胞

○癌の増殖と再発

 ・正常な細胞が遺伝子の変異を起こす
  染色体の形が乱れたり、遺伝子に傷がついたり、異常が積み重なる
 ・癌細胞ができる
  分裂を繰り返して増殖する

○放射線療法、化学療法

 ・癌細胞は死ぬ
 ・癌幹細胞は薬や放射線で叩かれても生き延びる

○癌の再発○

 ・しかし、癌幹細胞を探して叩けば、癌を根絶出来る可能性

 

死亡数が多い癌の部位
  男性 女性
癌が出来難い部位 心臓
1位
2位
3位 肝臓 結腸
4位 結腸 膵臓
5位 膵臓 乳房


  2007年時点 出典 朝日新聞

○癌幹細胞は、抗癌剤や放射線にめっぽう強い。
治療して、癌が死滅したように見えても、数年後に再発してしまう事がありますが、幹細胞が残っていて、再発の原因となるらしいのです。

「薬や放射線で死滅出来るのは部下の癌細胞だけで、指揮官の幹細胞はしぶとく生き延びてしまうと考えられている」と慶応大の佐谷秀行教授は説明します。再発は偶然に起こったのではなく、生物学的な必然だったという考え方です。

寿命の長い幹細胞の分裂サイクルはゆっくりで、その生存を支える細胞などに囲まれた隠れ家のような場所で守られているのだと言います。

元凶が幹細胞ならば、治療は幹細胞を狙い撃ちすれば良い。こんな新しい治療法を探る研究が始まっています。東京医科歯科大の田賀哲也教授は「世界でも注目分野に成長してきた」と言います。

米国や日本癌学会で、2005年頃から、癌幹細胞をテーマにしたシンポジウムが開かれるようになりました。研究論文も2003年は世界で数本しかありませんでしたが、08年は約500本に増えたと言います。

研究者達が考えている治療の戦略の一つは、癌幹細胞の表面だけにある蛋白質を探して、それを直接攻撃する方法です。生き延びさせている隠れ家をなくしたり、そこから追い出したりする方法なども試みられています。

東京大の宮園浩平教授等は、治療が難しい脳腫瘍の幹細胞を標的にした治療法の開発を目指しています。幹細胞の能力を維持する鍵となる物質を探し出し、その働きを妨げる戦略を描きます。

「癌幹細胞としての能力を奪って、普通の癌細胞に変えてしまう方法」と言います。部下の細胞だけになってしまえば、後は抗癌剤などでやっつけられます。

○癌幹細胞は、未だ謎が多い。
最初の1個はどう生まれるのか、全ての癌に幹細胞があるのかと言った基本的な仕組みの解明もこれからです。しかし、宮園さんは「幹細胞の理解を深めて、上手く手懐ける事が出来れば、癌の根絶という人類の悲願も夢ではないと考えている」と期待しています。

癌根絶へ、癌幹細胞狙い撃ち

国民の死亡原因の1位を占める「癌」。この異常に増え続ける細胞の塊の中に、とりわけ増殖能力の高い細胞が見つかりました。これが「指揮官」となり、「部下」の癌細胞を増やしているらしいのです。

「癌幹細胞」と呼ばれるこの指揮官を狙い撃ち出来れば、夢の癌根絶に繋がると期待されています。

癌は、遺伝子の変異が重なって制御が利かなくなり、異常に増え続けてしまう細胞の塊です。臓器に侵入したり、遠くに転移したりします。悪性の分泌物を出し、正常な細胞の栄養を奪い、大きくなって臓器を圧迫、死に至らしめます。

癌の治療は、こうした細胞の塊を「みんな同じ悪者」と見なして除去することを目標とします。しかし、塊が全て同じではない事が分かってきました。
九州大の赤司浩一教授は「一部の細胞だけが高い増殖能力を持ち、癌細胞を作り続けていることが明らかになってきた」と話します。この一部の細胞が「癌幹細胞」です。「指揮官」として、「部下」の癌細胞を沢山作るというシナリオです。

幹細胞は、1本の幹から枝葉が広がるように子孫を増やす「種」のような細胞です。正常な幹細胞は体の様々な場所にあり、自身のコピー細胞と、それぞれの組織で皮膚や肝臓など枝葉に当たる細胞を作り出します。

このお陰で、例えば細胞が太陽の紫外線や発癌物質によって傷ついても、新しい細胞ができて入れ替えられると言います。
癌幹細胞は、正常な幹細胞や、それに近い細胞の遺伝子に幾つもの変化が起こってできると考えられています。

幹細胞が癌にも存在するという予想は、1950年代頃からありましたが、有力な証拠が見つかったのは1997年。細胞を調べる技術が進んで、カナダの研究チームが、血液の癌である白血病の細胞から見つけました。2003年には、乳癌、その後、脳腫瘍や大腸癌などでも報告が相次ぎました。

癌幹細胞の特徴は、高い増殖能力です。

赤司さん達は、ヒトの白血病の細胞を取り出し、癌幹細胞が入っている細胞群と入らない細胞群に分けて、マウスに移植し、癌が出来るかどうかを調べました。すると、幹細胞が入っていない細胞は、約100万個移植しても白血病にはならなかったのに対し、幹細胞を含む細胞では、1000個程移植しただけで、癌を発症しました。


[朝日新聞]

日本アイソトープ協会が2003年から毎年、全国の施設に行っているアンケート(回答率64~89%)では、PETの癌検診(保険適用外)は2003~05年に3倍に急増し、月間6千件を数えました。しかし、その後は5千件前後で推移し、そう増えてはいません。

2006年にはPETは癌の大半を見落とす、との報道もありました。焦点となったのは、国立がんセンターの検査データで、他の画像診断や内視鏡など、各手法を駆使した手厚い検診で約3千人から見つかった129個の癌の内、PETが検知したのは28個だけでした。
担当者は「他の検査では通常は余り見つからない緊急性の低い癌も多かった。それで相対的にPETの成績が落ちた」と分析します。

横浜市立大などが、国内のPETを併用した検診結果を検証したところ、大腸癌、甲状腺癌、肺癌、乳癌で、PETが検知しなかった癌は2割以下に留まります。
前立腺癌と胃癌は6割以上ですが、同大の井上登美夫教授は「大腸などは個別に臓器を調べる他の検診方法より成績はそう劣らない。更にPETには全身を一度に見られる利点もある。万能な検診手法は無く、PETとその弱点を補う別の手法を合わせるのが大事」と言います。

そもそもPET施設は経費が年数億円と高い。他の検査で確認出来ない癌の検査に保険が認められていますが、保険の7万5千円(患者負担2万2500円)の収入だけでは黒字が出づらいとされています。一方で、日本核医学会の推定では7月現在、国内のPET施設は259あります。

2000年代前半のPET検診ブーム時、「保険適用外で価格を自由設定できる検診の経営的な魅力から、PETを導入する病院が急増した」と医療経済学者の奥信也・会津大教授は解説します。その後、ブームは伸び悩み価格競争も激しくなりました。奥さんの調査では赤字施設もあり、全国の施設数は過剰な観もあります。

しかし、ある大学医師は「PETのない病院では、知識が乏しい医師やPET施設に患者を奪われることを恐れる医師が、患者に検査を勧めない場合がある」と指摘しています。

独協医大のPETで乳癌再発が分かった女性も、PETがない元の病院では勧められませんでした。何度も他病院の紹介を頼んだが断られ、自ら独協医大を訪ねました。「患者自身も勉強し、積極的に動くべきです」と話します。

PET検診が治療方針を大きく左右

PETは、治療方針を決めるのに大きな役割を果たしてきました。米国のグループの2008年の報告では、同国の高齢者医療保険制度のもとでPET検査を受けた約3万5千人の癌患者の内、38%で検査後の治療方針が変わっていました。
この内、30%の患者は検査前に「治療不可能または不要」と判断されていたのですが、PET検査後は治療する方針に。逆に8%は検査後、治療不可能または不要と判断されました。

PETの有効性を研究する寺内隆司・国立がんセンター特殊検診室長によると、PET検査で治療が改善し、寿命が延びたという統計データはありません。ですが、「助かる可能性のある人が新たに見つかるのは確か」と指摘します。

逆に「助からない」と分かる事もあります。寺内さんは「可能性の無い治療で苦しむより、人生を最後まで充実させる選択肢が生まれる」と話します。

最近は、抗癌剤の効果確認にも、PETは注目されるようになってきました。特に期待されるのが、分子標的薬という新しいタイプの薬です。
分子標的薬は、正常細胞に影響が無いよう、癌細胞の増殖だけを阻害し、副作用を抑える事を狙った薬です。
但し、癌細胞そのものを殺す効果は少ない為、従来のタイプより癌が縮小し難くなります。このため、形状を見るだけの画像検査では効果が分かり難いのですが、癌細胞の活発さを見るPETなら評価しやすいのです。

「より早い効果の確認で患者に適した治療に早く移ることが出来る」と独協医大の村上康二教授は語ります。

見直されるPETの検診力

PET(陽電子放射断層撮影)は、数年前に「夢の検診法」として関心を集めました。健康な人の癌を見つける検診目的でPETは急激な増加を見せましたが、最近は、治療方針の検討や化学療法の効果を確かめる手段として、重要性が高まっています。患者や家族が正しい知識を持ち、医師にPET検査の受診を相談する事が大切です。

2009年1月、独協医大病院でPET検査を受けた宇都宮市の主婦(57歳)は、医師に示された画像の所々に、癌を示すオレンジ色の部分が見えた事に唖然としました。
乳癌再発に加え、全身の骨や肺、リンパ節に転移していました。通っていた県内の他の病院では、「癌は無い」とされていました。

彼女は、2005年、乳癌で左乳房を切除。その後も定期的に検査を受け続けていましたが、当時の病院ではPET検査はなく、再発や転移は見つかっていませんでした。
再発が分かってからは、薬剤治療が効いて、今夏には、癌が骨の一部に残るだけ迄に縮小。「前の病院はPETを勧めてくれなかったが、思い切って独協医大を訪ねて良かった」と話します。

X線など、他の画像検査で分からない癌がPETで見つかるのは、体内の組織の形を見るのではなく、細胞の糖分消費の活発さを調べるためです。癌細胞は盛んに成長するため、通常の細胞よりもエネルギー源になる糖分の消費が多い。
検査では、放射線を出すブドウ糖の試薬を受診者に注射し、PET機器で放射線を測定して、その多さによって体内の何処でブドウ糖が多く消費されているかを見ます。


[朝日新聞]

肺癌の標準的治療と今後の展望

肺癌の治療は、臨床試験の結果、有用性が確認されている「標準的治療」が行われ、これは現時点で最良と考えられる治療法です。癌の種類(組織型)や病期(ステージ)によって異なります。

先ず、肺癌は「小細胞肺癌」と「非小細胞肺癌」に分かれます。
小細胞肺癌は、早期に転移しますが、化学療法や放射線療法が良く効くのが特徴です。
非小細胞肺癌は、小細胞肺癌と比べると、進行が遅く早期であれば手術での治療が期待できます。更にⅠ~Ⅳ期の病期別に分け、手術療法・放射線療法・化学療法から適切な治療法が選択されます。

○手術療法は癌のある肺葉の切除と近傍のリンパ節を郭清するのが標準的ですが、最近では早期の癌であれば胸に小さな穴を開けてモニターを見ながら行う「胸腔鏡手術」が行われる事もあり、この手術は患者の負担が少ないのが特徴です。

○放射線療法は、X線や他の高エネルギーの放射線を照射するもので、肺癌の治療だけでなく骨転移や脳転移の症状緩和にも有効です。コンピューター制御による「定位放射線療法」は、Ⅰ期の肺癌に有効で手術に近い成績も報告されています。癌の部分のみを正確に照射する事で副作用を軽減する、照射精度向上のための技術研究が進められています。

○化学療法は、転移などで癌が広がっている場合に有効で、従来の抗癌剤と分子標的治療薬の二つがあります。最近研究が進んでいる分子標的治療薬に、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤があります。この薬剤は、EGFR遺伝子変異のある人では高い効果を、変異のない人には効果が低いというデータが報告されており、今後は可能な限り、EGFR遺伝子変異の結果に基づいて使用を検討する事になるでしょう。

これからは、患者個々の癌の性質などに基づいて薬を選択する「個別化治療」の時代がやって来ると思われます。

肺癌の正しい診断、最善の治療

○肺癌の最初の検査は、「癌の存在を調べる検査」です。

先ず、「胸部X線写真」で画像診断を行います。レントゲンに影が出ている場合や、出ていなくても症状やリスク因子が有り、必要な場合には「胸部CT検査」を行います。

CT検査は死角になる部分が少なく、小さな異常影の検出にも有用ですが、良性悪性の区別が難しい事も有ります。他に、「喀痰細胞診」や「腫瘍マーカー」などの検査が必要に応じて行われます。

○これらの検査で肺癌が疑われた場合、実際に病変の細胞や組織を採って顕微鏡で調べる「診断確定のための検査」に進みます。
「気管支鏡検査」は、内視鏡を口から挿入し、気管支の組織や細胞を採取します。

直視下やX線透視下で見えない場合や病変に到達しない場合は、X線やCTを見ながら皮膚に針を刺して細胞や組織を採る「径皮針生検・CTガイド下肺針生検」や、胸に3ヶ所程小さく開けた穴から器具を入れて胸腔内の組織を採る「胸腔鏡下肺生検」などが行われます。

○その結果、肺癌と診断されたら、「病期診断のための検査」に入ります。CT検査やMRI検査、PET検査などで全身検査を行い、原発巣の大きさや広がり、リンパ節転移はないか、遠隔転移はないかを調べます。この三つの因子により癌の進行をⅠ~Ⅳ期に分類し、この結果から治療方針の決定を行っていきます。

○更に最近では、「EGFR遺伝子変異の検索」が注目されています。これは、癌の増殖や転移などに関わる上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子に異変があるかどうかを調べる検査で、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(分子標的薬)の効果を予測することが可能です。

特定の部位に変異がある場合にEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が効きやすく、日本人の約30%にこの変異があるので、治療方針を決める上で非常に有用な検査と言えるでしょう。

肺癌対策は、日本人の国民的課題

日本人の肺癌の患者数は近年急激に増加しており、肺癌は「健康上の喫緊の課題」と言わざるを得ません。その大きな原因の一つが煙草です。イギリスでの長期に渡る追跡調査では、1日に20本以上煙草を吸うヘビースモーカーは、吸わない人の約20倍肺癌に罹りやすい事が報告されました。

2005年時点での日本人の喫煙率(男性は1965年以降下がってきてはいますが)は、男性46.3%、女性13.3%で、アメリカの25.7%、21.5%、イギリスの27.0%、26.0%(日本たばこ産業株式会社による)に比べると、禁煙対策が進む先進各国の中にあっては、禁煙に対する意識が低い事が窺えます。日本人女性の喫煙率は高くはないものの、20代で増えており、若い女性の喫煙は「子供を生む際の影響」が懸念されます。

アメリカで社会的に禁煙対策が為されて約20年。増え続けていた肺癌患者数が急激に減っています。肺癌対策は何より予防が一番ですが、禁煙が効果的な肺癌の予防法である事は間違いないでしょう。

日本に於いては、2007年4月に「がん対策基本法」が施行されました。この法律は、制定に癌患者が加わった今迄にない事例です。内容としては、

 ・癌の予防や検診
 ・放射線療法や薬物療法の専門医を増やす
 ・初期段階からの緩和ケアの推進
 ・癌医療に関する相談支援や情報提供

があります。

最終的には、

 ・癌の死亡者を減らすこと
 ・全ての癌患者やその家族の生活の質(QOL)を向上させること

を目標としています。


[朝日新聞]