PET検診を勧めない医師、患者は勉強を

日本アイソトープ協会が2003年から毎年、全国の施設に行っているアンケート(回答率64~89%)では、PETの癌検診(保険適用外)は2003~05年に3倍に急増し、月間6千件を数えました。しかし、その後は5千件前後で推移し、そう増えてはいません。

2006年にはPETは癌の大半を見落とす、との報道もありました。焦点となったのは、国立がんセンターの検査データで、他の画像診断や内視鏡など、各手法を駆使した手厚い検診で約3千人から見つかった129個の癌の内、PETが検知したのは28個だけでした。
担当者は「他の検査では通常は余り見つからない緊急性の低い癌も多かった。それで相対的にPETの成績が落ちた」と分析します。

横浜市立大などが、国内のPETを併用した検診結果を検証したところ、大腸癌、甲状腺癌、肺癌、乳癌で、PETが検知しなかった癌は2割以下に留まります。
前立腺癌と胃癌は6割以上ですが、同大の井上登美夫教授は「大腸などは個別に臓器を調べる他の検診方法より成績はそう劣らない。更にPETには全身を一度に見られる利点もある。万能な検診手法は無く、PETとその弱点を補う別の手法を合わせるのが大事」と言います。

そもそもPET施設は経費が年数億円と高い。他の検査で確認出来ない癌の検査に保険が認められていますが、保険の7万5千円(患者負担2万2500円)の収入だけでは黒字が出づらいとされています。一方で、日本核医学会の推定では7月現在、国内のPET施設は259あります。

2000年代前半のPET検診ブーム時、「保険適用外で価格を自由設定できる検診の経営的な魅力から、PETを導入する病院が急増した」と医療経済学者の奥信也・会津大教授は解説します。その後、ブームは伸び悩み価格競争も激しくなりました。奥さんの調査では赤字施設もあり、全国の施設数は過剰な観もあります。

しかし、ある大学医師は「PETのない病院では、知識が乏しい医師やPET施設に患者を奪われることを恐れる医師が、患者に検査を勧めない場合がある」と指摘しています。

独協医大のPETで乳癌再発が分かった女性も、PETがない元の病院では勧められませんでした。何度も他病院の紹介を頼んだが断られ、自ら独協医大を訪ねました。「患者自身も勉強し、積極的に動くべきです」と話します。