肺癌の標準的治療と今後の展望

肺癌の治療は、臨床試験の結果、有用性が確認されている「標準的治療」が行われ、これは現時点で最良と考えられる治療法です。癌の種類(組織型)や病期(ステージ)によって異なります。

先ず、肺癌は「小細胞肺癌」と「非小細胞肺癌」に分かれます。
小細胞肺癌は、早期に転移しますが、化学療法や放射線療法が良く効くのが特徴です。
非小細胞肺癌は、小細胞肺癌と比べると、進行が遅く早期であれば手術での治療が期待できます。更にⅠ~Ⅳ期の病期別に分け、手術療法・放射線療法・化学療法から適切な治療法が選択されます。

○手術療法は癌のある肺葉の切除と近傍のリンパ節を郭清するのが標準的ですが、最近では早期の癌であれば胸に小さな穴を開けてモニターを見ながら行う「胸腔鏡手術」が行われる事もあり、この手術は患者の負担が少ないのが特徴です。

○放射線療法は、X線や他の高エネルギーの放射線を照射するもので、肺癌の治療だけでなく骨転移や脳転移の症状緩和にも有効です。コンピューター制御による「定位放射線療法」は、Ⅰ期の肺癌に有効で手術に近い成績も報告されています。癌の部分のみを正確に照射する事で副作用を軽減する、照射精度向上のための技術研究が進められています。

○化学療法は、転移などで癌が広がっている場合に有効で、従来の抗癌剤と分子標的治療薬の二つがあります。最近研究が進んでいる分子標的治療薬に、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤があります。この薬剤は、EGFR遺伝子変異のある人では高い効果を、変異のない人には効果が低いというデータが報告されており、今後は可能な限り、EGFR遺伝子変異の結果に基づいて使用を検討する事になるでしょう。

これからは、患者個々の癌の性質などに基づいて薬を選択する「個別化治療」の時代がやって来ると思われます。