2009年9月アーカイブ

前立腺の2大疾患には、「前立腺癌」と「前立腺肥大」があり、症状はよく似ています。

肥大症は前立腺の内腺(尿道を取り巻く部分)に発生し、尿道の閉塞に伴って「残尿感」や「頻尿」、「尿線が細くなる」などの症状が出やすくなります。

前立腺癌は、前立腺の外腺(内腺の外側)に発生することが多いため、早期は「無症状」です。癌が前立腺内に留まっているうちは、症状はほとんど出ないのですが、進行して広がると症状が現れてきます。

日本では、前立腺癌で亡くなる人が右肩上がりに増えています。2000年の死亡者数は、7514人で、20年には約2万人になると予想されています。
米国では、前立腺癌になる人は非常に多いのですが、死亡者数は減少傾向にあります。これは採血だけで前立腺癌の可能性を調べられるPSA検診が広く普及し、早期診断に伴って進行癌が減ったためと考えられています。

日本では、PSA検査が導入される約15年程前までは、前立腺癌の患者の半数以上は、転移した状態で見つかっていました。しかし、近年では、PSA検診が普及している地域では、早期癌として6~7割の人が発見されるようになってきています。
全国的には今でも、3割の人が、転移癌で発見されていると言われています。

前立腺癌の発症を抑える有効な予防法は、今のところありません。

尚のこと、早期発見・適切な治療が重要になります。PSA検診のメリット、デメリットを正しく判断し、前立腺癌で命を落とす人が増えている現状をよく理解して、PSA検査を受ける事が重要です。


メリット:
 前立腺癌の早期発見
 早期発見により、治療の選択肢が増え、完治の可能性を高める
 PSA検査は、内科や泌尿器科で受けられる

デメリット:
 異常値によるPSA再検や最終診断のための生検が必要になる
 生検による発熱や出血などの合併症が極稀に生じる

初期症状が無い前立腺癌を発見するための主な検査として、「直腸診」や「経直腸的超音波検査」、「PSA検査」があります。


前立腺癌の主な検査<初期は無症状>
検査 概要 精度
直腸診 肛門から直腸に指を入れて診察する 約50%
経直腸的超音波検査 直腸に専用の超音波装置を入れて
エコー(反射波)を画像化する
約40%
PSA検査 採取した血液からPSA値を測る 約90%


  PSA:前立腺特異抗原


前立腺癌を見つけられる精度は、PSA検査が約90%と言われていますが、日本では未だPSA検査自体が十分に認知されていないのが実情です。

PSA検査のメリットは、

 ・前立腺癌が転移する前に発見でき、癌による死亡の危険性が確実に低下
 ・検査自体は泌尿器科の専門医でなくても可能
 ・毎年継続して受診すれば、96%~97%前立腺癌を発見できる

とのことですが、デメリットとして、

 ・PSAを生産しない前立腺癌が3%~4%存在する
  (PSA検査では、発見できない)
 ・本来治療を行う必要が無い、おとなしい性質の癌も一部含まれている
  (これらを治療してしまう過剰治療)
 ・過剰治療による負担が生活の質(QOL)を低下させる

などがあります。


メリットとデメリットを正しく理解した上で、50歳を過ぎたら健康診断に前立腺癌の検査を組み合わせるなどして、定期的な検査を受け、前立腺癌の早期発見に役立てる事が大切です。

前立腺癌 - 早期発見が何よりも重要

男性が罹る癌の中で、近年一番増加率が高いのが「前立腺癌」で、罹患率が2020年には00年の3~4倍に増加するとも言われています。

前立腺は、男性だけが持つ臓器で、精液の一部を作る働きがあります。膀胱の直ぐ下に位置し、真中に尿道が通るため、前立腺に病気があると尿に何らかの症状が出やすくなります。

前立腺の病気には、「前立腺肥大症」や「前立腺炎」などがありますが、一番問題になるのが急増している前立腺癌です。他の癌に比べて穏やかに進行するのが特徴で、初期症状が無いことがこの癌の発見を遅らせる一つの理由になっています。

前立腺癌は、主に50歳以降に罹る病気で、60歳代後半に最も多く見られます。前立腺は、男性ホルモンの影響を強く受ける臓器のため、血液中の男性ホルモンが徐々に減少してくる高齢者が、前立腺癌を発症しやすくなります。

前立腺癌が増えている大きな原因は、食生活の欧米化にあると考えられています。40~50年前、欧米では前立腺癌が日本人の20~30倍多く見られましたが、当時、前立腺癌に罹る日本人は少数でした。

家族内発生も多いので、身内に前立腺癌の人がいれば、リスクは高くなりますから、より早期発見が重要となります。

前立腺癌を早期に発見できれば、癌細胞を体内から全切除できる可能性も高まりますが、たとえ完治しなくても、ホルモン療法と放射線療法を組み合わせるなど、患者が本来持つ寿命に影響しないように、癌をコントロールしながら社会生活を送ることが可能となります。

早期発見に有効なのが、血液を採取するだけで前立腺癌の可能性を調べられる「PSA検査」です。

8月31日、厚生労働省は、若い女性を中心に増加している子宮頸癌を予防するワクチンについて、承認に向けた手続きに入りました。厚労省の薬事・食品衛生審議会部会で審議、了承されたワクチンは、既に96ヶ国で使用されています。

9月下旬に上部組織である薬事分科会の審議で了承が得られれば、10月にも国内では初めてとなるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンとして正式に承認され、早ければ年内にも発売される見通しです。

このワクチンは、製薬会社のグラクソ・スミスクライン(GSK)が承認申請していた「サーバリックス」。

子宮頸癌は子宮の入り口付近の頸部にできる癌で、多くは、性行為によるHPVの感染が原因とみられています。

厚労省などによると、HPVは100種類以上の型があり、十数種類が癌を誘発しますが、今回のワクチンはこの内、最も頻度が高い16型、18型という2種類に対する感染予防に有効性が認められており、10歳以上の女性が接種対象となります。

日本では、毎年約7千人が新たに子宮頸癌と診断され、約2500人が亡くなっており、専門家や患者団体から早期承認を求める声が強く、厚労省は優先審査の対象に指定し、海外の臨床試験データの審査と国内での臨床試験を並行して進めていました。

また、子宮頸癌は30代後半から40代に多いとされていますが、最近では低年齢化が進んでいます。


[朝日新聞]

8月10日、遺伝子を組み換えたウイルスを使って、癌細胞を破壊する治療の臨床試験を8月中にも開始すると、東京大医学部付属病院が発表しました。遺伝子を組み換えたウイルス療法の臨床試験は、国内では初めて。

臨床試験を計画しているのは、東大病院の藤堂具紀特任教授(脳神経外科)らのチームで、2007年に学内の審査委員会で承認され、09年5月、厚生労働省の承認を受けました。

再発した膠芽腫(悪性脳腫瘍の一種)の患者を対象に、癌細胞だけを狙い撃ちするようにしたウイルスを注入、安全性と効果を検証し、新しい治療法の確立を目指します。

臨床試験対象の膠芽腫は、手術後に放射線や抗癌剤治療を行っても、平均余命は診断から1年程で、2年生存率は30%以下とされ、国内では年間約10万人に1人が発症すると言われています。

頭部に小さな穴を開け、開発したウイルスを腫瘍部分に注入します。悪性脳腫瘍が再発し、治療の手立てがない症例が対象で、2年を目途に21人に対して行い、脳の炎症や麻痺などが起こらないか、腫瘍の大きさの変化などを調べます。


注入するウイルスは、

 ・口の周りなどに水疱をつくるヘルペスウイルスの三つの遺伝子を組み換えた
 ・ウイルスが細胞に感染した際、癌細胞でだけ増殖し、正常な細胞では増えることが出来ないように工夫
 ・癌を攻撃する免疫細胞を強める働きも持たせた

そうです。


欧米では同様の臨床試験が始まっていますが、今回は更に安全性や効果を高めたウイルスを使うようです。

藤堂さんは「ウイルス療法は脳腫瘍だけでなく、前立腺癌や乳癌にも使える可能性がある。慎重に研究を重ね、放射線や抗癌剤などと並ぶ、新しい治療法の一つとして確立したい」と話しています。