ウイルス使い脳腫瘍治療 - 東大病院臨床試験へ

8月10日、遺伝子を組み換えたウイルスを使って、癌細胞を破壊する治療の臨床試験を8月中にも開始すると、東京大医学部付属病院が発表しました。遺伝子を組み換えたウイルス療法の臨床試験は、国内では初めて。

臨床試験を計画しているのは、東大病院の藤堂具紀特任教授(脳神経外科)らのチームで、2007年に学内の審査委員会で承認され、09年5月、厚生労働省の承認を受けました。

再発した膠芽腫(悪性脳腫瘍の一種)の患者を対象に、癌細胞だけを狙い撃ちするようにしたウイルスを注入、安全性と効果を検証し、新しい治療法の確立を目指します。

臨床試験対象の膠芽腫は、手術後に放射線や抗癌剤治療を行っても、平均余命は診断から1年程で、2年生存率は30%以下とされ、国内では年間約10万人に1人が発症すると言われています。

頭部に小さな穴を開け、開発したウイルスを腫瘍部分に注入します。悪性脳腫瘍が再発し、治療の手立てがない症例が対象で、2年を目途に21人に対して行い、脳の炎症や麻痺などが起こらないか、腫瘍の大きさの変化などを調べます。


注入するウイルスは、

 ・口の周りなどに水疱をつくるヘルペスウイルスの三つの遺伝子を組み換えた
 ・ウイルスが細胞に感染した際、癌細胞でだけ増殖し、正常な細胞では増えることが出来ないように工夫
 ・癌を攻撃する免疫細胞を強める働きも持たせた

そうです。


欧米では同様の臨床試験が始まっていますが、今回は更に安全性や効果を高めたウイルスを使うようです。

藤堂さんは「ウイルス療法は脳腫瘍だけでなく、前立腺癌や乳癌にも使える可能性がある。慎重に研究を重ね、放射線や抗癌剤などと並ぶ、新しい治療法の一つとして確立したい」と話しています。