乳房を切らないラジオ波治療 - 乳癌残る恐れと学会

乳癌を「切らずに治せる」と広まっている「ラジオ波」で癌を焼く手術について、日本乳癌学会は「癌が取りきれない恐れがあり、長期的な成績も分からない」として、対象患者を限定するなど、研究段階の治療である臨床試験として実施するよう会員に通知しました。

強制力はありませんが、悪質例は対応を検討すると言います。

この治療は、「ラジオ波熱凝固療法」と呼ばれます。7~8年前から広がっていますが、公的医療保険は適用されていません。直径数mmの針を乳輪付近から刺し、高周波電流を流して患部を熱して癌を焼きます。治療は通常30分以内で済みます。

しかし、現在の早期乳癌の標準治療は切除手術です。ラジオ波だと、切った癌の周囲の細胞を調べ、取りきれたかどうかの確認検査が出来ません。

ラジオ波手術後、再発した患者を診た会員からの指摘が相次ぎ、日本乳癌学会は今年、一定の治療水準にある認定施設831ヶ所にアンケートをしました。その結果、29ヶ所で約1千人が治療を受けていました。内9ヶ所は、臨床試験以外の自由診療で行っていました。

国立がん研究センター中央病院など5施設は、臨床試験として、乳癌の大きさが3cm以下の患者にラジオ波手術をしました。その結果、38人中6人に取り残しが確認され、今年度から対象を1cm以下の癌の患者に絞り、定期的に再発などの確認などをしています。

一方、症例数が約600人と最も多い東京都内のクリニックでは、32万円の自由診療で、希望があれば腫瘍が3cm以上でも手術しています。「臨床試験だと症例が限られ、今後も自由診療で続ける」と言います。
再発率は通常の手術と同じ5~10%程度と言いますが、2割近い患者については術後の経過が把握出来ていません。

乳癌の患者は年間約5万人に上り、年々増えています。

学会調査を担当した東北大の大内憲明教授は、「癌が再発や進行した患者が、他施設に駆け込むと言う報告が複数有り、看過出来ないと判断した」と話します。


乳癌のラジオ波治療:

 ラジオ波(300kHz~3MHzの高周波)電流で、癌細胞を60~80度程度に熱して、癌細胞を死滅させる。


[朝日新聞]