胃癌リスク検診

ピロリ菌に感染している人が必ずしも皆、胃癌になる訳ではありません。そこで他の検査で補って、正確にリスクを予測しようという取り組みも進んでいます。

胃癌リスクを調べる手段に、胃の粘膜が「前癌状態」とも言える慢性胃炎の萎縮性胃炎になっているかどうかの検査があります。これにピロリ菌の有無の検査を組み合わせた「胃がんリスク検診」を、浅香教授や三木一正東邦大学名誉教授等が提唱しています。

胃の粘膜が萎縮していると、ペプシノゲン(PG)という酵素の分泌量が減ります。PGの分泌量が多いかどうかは、血液中に漏れ出るPGの量を量って分かる為、ピロリ菌の有無と組み合わせてリスク群を分けます。ピロリ菌の感染が無く、胃粘膜の萎縮が無いA群は、自覚症状がなければ内視鏡検査は不要です。ピロリ菌がいて胃粘膜が萎縮しているC群は、2年に1度、内視鏡検査の必要があります。

三木さん等によると、リスク検査は、今、胃癌検診で推奨されているX線検査より手間が掛からず、検診率を上げる事も見込めます。検査による放射線の被曝もありません。リスク検診は、東京都目黒区など、幾つかの自治体や事業所で取り組まれています。

群馬県の高崎市医師会は、4年前(平成18年)に検診を始めました。市の助成も受けますが、700円の自己負担を求めています。
「ピロリ菌の有無と胃の萎縮状況を知る事で、検診を受けた人は自分が将来、胃癌に気を付けなければいけないのかどうか、意識も出来る」と、リスク検診導入の先頭に立った乾内科クリニックの乾純和院長は話します。
5月、京都市伏見区の医師会も無料で検診を始めました。

 

胃がんリスク検診のリスク群
危険率が高まる 小 → 大
  A群 B群 C群 D群
ピロリ菌 × ×
ペプシノ
ゲン値
× ×
胃の状態   ピロリ菌
有り
ピロリ菌有り
胃粘膜が萎縮
ピロリ菌が胃に
住めなくなり退却
胃粘膜が萎縮


  注)○陰性 ×陽性