癌検診は、質の確保が欠かせません。癌の見落としが多かったり、逆に癌でない人が沢山精密検査を受けていたりすると、検診の意義が問われます。検診の「精度管理」は、受診率の向上策に比べて目立たない取り組みでしたが、その重要性が注目され始めています。
ご多分に漏れず、日本でも癌検診の質にはバラツキがあります。
宮城県は、市町村の癌検診を基準を元に評価し、改善点のアドバイスを市町村に伝えています。平成18年度実施分から全ての評価結果をインターネット上で公表しています。これで取り組みが不十分だった市町村の底上げに成功しました。
評価項目は、検診対象者の名簿を作成しているか、精密検査を受けなかった人に受診を勧めているかなどで、検診の種類毎に23~24項目のチェックリストになっています。厚生労働省の検討会が作ったリストを元にしました。全項目を満たすとA評価、満たない項目が1~4個ならB評価、5~8個はC評価です。
平成18年度に実施した癌検診では、36市町村の中でC評価は8ありましたが、平成19年度はCが零になり、全般にA評価の市町村が増えました。かつてC評価を受けた町の担当者は、「精密検査の受診率が低いなどの問題があった。電話で受診を勧めるなど改善した」と言います。
検診で「精密検査が必要」とされた人が検査を受けなかったら、癌の発見が遅れる可能性がありました。ただ地方の病院は、慢性的な医師不足。医師や技師が検診の研修に時間を割くのが難しい面もあります。
宮城県対がん協会がん検診センターの渋谷大助所長は、「評価して結果を公表する仕組みは、質の向上に役立っている。ただ全国的に、未だ珍しい取り組み。他の都道府県も参考にして欲しい」と言います。
市町村から受託して癌検診を実施している同協会も、質の向上に努めています。検診のX線画像などのデジタル化を進め、コンピューターに蓄積。医師が画像から癌を疑った時、前回の画像を直ぐ取り出して比較出来ます。渋谷所長は、「比較して判断しやすくなり、不必要な精密検査を減らす事が出来た」と言います。
厚労省は平成19年度、「がん検診事業の評価に関する委員会」を開き、報告書を纏めました。当時の調査では、評価のチェックリストを活用している市は、全国の2割程度しかなく、報告書はリストで実態を把握するように求めました。
この委員会のメンバーだった国立がん研究センターの斎藤博検診研究部長は、「宮城県は頑張っているが、全国の自治体にはチェックリストの意義が未だ十分理解されていない。精度管理に力を入れないと質を保てない」と語ります。
市区町村の検診/会社などの職域検診/個人での人間ドックなど、検診の質を見分ける目安は?
日本人間ドック学会では、会員施設の機能評価をネットで公表しています。検診の質などについて、優・良・可の評価を見る事が出来ます。癌検診でX線画像を調べる「読影」に関しては、医師のダブルチェックが実施されていると安心出来ます。
乳癌検診については、NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会が、撮影認定診療放射線技師・医師、検診施設画像認定施設の認定をしており、施設名などをネットで公表しています。
平成18年度実施分 | |||||
種類 | 胃癌 | 子宮癌 | 肺癌 | 乳癌 | 大腸癌 |
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A評価 | 13 | 16 | 11 | 13 | 13 |
B評価 | 22 | 20 | 21 | 21 | 22 |
C評価 | 1 | 4 | 2 | 1 | |
平成19年度実施分 | |||||
A評価 | 19 | 21 | 17 | 23 | 18 |
B評価 | 17 | 15 | 19 | 13 | 18 |
C評価 |
注:市町村数
[朝日新聞]