肝癌 - 腹腔鏡手術、傷や負担が小さめ

肝癌の治療で、お腹に開けた小さな穴から入れたカメラや器具で癌を切る腹腔鏡手術が注目されています。血管が複雑に走る肝臓は安全面から、お腹を大きく開けてよく見ながら手術するのが一般的でした。
腹腔鏡手術は、傷が小さく患者の負担が少ないのが魅力で、今年4月から一部が保険適用されました。器具の開発が普及を促しましたが、技術力が問われるだけに、実績を確かめて慎重に病院を選ぶ必要があります。

東京都内の40代の女性は、一昨年に、肝内胆管癌で腹腔鏡手術を受けました。手術から11日目に退院。その2ヶ月後には、スポーツジム通いも出来るようになりました。今は検査値も落ち着いていると言います。お腹の傷も「想像以上に小さかった」と喜びます。

女性は健康診断で受けた肝臓の検査で異常が見つかり、精密検査で2cm程の肝内胆管癌と分かりました。医師は、肝臓の一部を切り取る手術を受けるよう勧めました。

女性は手術が必要だと納得はしましたが、「ボディービルが趣味で、お腹の筋肉を大きく切る事に抵抗があった」と言います。悩みながらインターネットで調べる内に、腹腔鏡手術があるのを知りました。

国内有数の実績がある岩手医大を受診。途中で通常の外科手術に変更する場合がある事を説明された上で入院し、肝臓の左葉と胆管を切除しました。

腹腔鏡手術は、お腹を少し切って開けた複数の穴から管を入れてワイヤの先についたカメラや切除器具で肝臓を切除します。お腹に開けるのは1ヶ所が5mm~1cm程で、3~5ヶ所。中の様子を映し出すモニターの画面を見ながら医師が遠隔操作します。

女性が受けたのは、「腹腔鏡補助下手術」。穴の他に、器具の動きを医師が目で確かめる為約7cm切りましたが、それでも15~20cmを3ヶ所切るような通常の手術より傷は小さく済みました。

また、癌が大きいと、切除する肝臓も大きくなり、取り出す為に7cm程の傷跡が残る場合もあります。執刀した若林剛医師は、「女性にとって体の傷は大きな悩み。腹腔鏡手術はそうした悩みに応えられる」と話します。

腹腔鏡手術は、モニターの映像を頼りに、腹腔内という狭い空間で器具を動かす為、大量出血の対応などでは高い技量が求められます。

更に肝臓には、静脈の一種で「門脈」と呼ばれる独特の血管が巡っています。その為長年、肝臓を切る際は出血に備え、お腹を大きく切って開けて医師がよく見えるようにすべきだとされてきました。

そうした中、平成12年に左葉の「外側区域切除」と、それより小さく癌を切る「部分切除」が、入院や検査などは健康保険でカバー出来る先進医療制度に認められました。止血器具も進歩。九州大、新潟大、大阪大、広島大、群馬大、琉球大など、13施設に先進医療の取り組みが拡がり、手術自体への保険適用に至りました。


[朝日新聞]