肝細胞癌治療に新薬 - 負担小さいソラフェニブ

肝癌の9割を占める肝細胞癌に効果的な新薬が、2009年5月に認可されました。癌細胞だけを狙い撃ちする「分子標的薬」で、治療の柱として期待されています。飲み薬で患者への負担が小さいのが利点です。

同じタイプの新薬は、他の癌でも次々に開発され、副作用の防止策の検討も進んでいます。

2007年1月、みぞおち付近に激しい痛みを感じ、検査で肝臓に7cm大の腫瘍が見つかった大阪府東大阪市の男性(54歳)は、「薬のお陰で、仕事にも復帰できた」と言って笑顔を見せました。彼は30代の頃、B型肝炎でインターフェロンの治療を受けていました。

切除手術や腫瘍に繋がる血管の血流を止める肝動脈塞栓術を受けましたが、半年後に肺4ヶ所に転移。07年10月には主治医から「もう標準的な治療法では無理です」と言われました。

ソラフェニブ(商品名ネクサバール)を知ったのは、そんな時でした。肝細胞癌に効く飲み薬として欧米で使われていましたが、当時、国内では未承認でした。「藁をも掴む思い」で個人輸入に踏み切りました。近畿大病院に転院し、治療を始めました。

2008年1月に飲み始めると見る見る内に効果が出ました。半年の間に腫瘍はほぼ消えてしまったと言います。今は、朝晩薬を飲み、毎月外来で治療を続けています。

一度は、「覚悟」したそうですが、「来年の息子の結婚式に行けそうや」と言って笑いました。


肝細胞癌:

肝臓から発生した癌の9割を占める。国の癌統計によると2007年の死亡者数は3万人以上。男性の患者が多く、肺癌、胃癌に次いで3番目で、男女のトータルでも3番目に多い。

B型肝炎やC型肝炎、肝硬変などの患者が、癌になる危険が高いと考えられている。


[朝日新聞]